40代女性の激しい物忘れは要注意?原因とセルフチェック&対処法

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中年期とも呼ばれる40代は、家庭や職場での責任が増し、心身ともに負担を感じやすい年代です。実際、世論調査でも「日常生活の不安や悩み」がもっとも多く挙がるのがこの年代。健康面や身体の変化について不安を抱える方も少なくありません。

 

40代になってから「あれ、何を取りに来たんだっけ?」「人の名前がすぐに出てこない」「メモしたのに見るのを忘れていた」こんな”物忘れ”が増えていませんか?

 

とくに女性は、ホルモンバランスの変化に加えて、仕事や家庭の忙しさから、集中力が一時的に低下することがあります。ちょっとしたうっかりなら笑い話で済むかもしれません。しかし、仕事上のミスや家族とのトラブルに発展する「激しい物忘れ」は、注意したいものです。

 

この記事では、40代女性に多く見られる物忘れのおもな原因と、自分でできるセルフチェック法、今日から実践できる対処法についてわかりやすく丁寧にご紹介します。

 

40代で物忘れが急増するのはなぜ?その理由と背景を解説

中年層の物忘れは一般的な現象

40代になると「物忘れが激しくなった」と感じる方が急増します。とくに女性は、更年期バランスの変化や生活環境の複雑化が影響しやすいと言われています。

 

以前は難なくこなせていた仕事や日常のタスクで物忘れが続くと、不安に思うのも当然です。この時期の物忘れには年齢特有の理由がひそんでおり、まずは、冷静に原因を理解することが、適切な対処への第一歩となります。

 

40代の物忘れの原因は若年層とは異なる

20代30代の若い世代の物忘れは、睡眠不足やスマホの長時間使用など一時的な脳の疲れがおもな原因です。

一方40代の一時的な物忘れは、女性ホルモンのエストロゲンが減少し始めることで、記憶や集中力に影響を与えると考えられています。エストロゲンは、脳の神経細胞の働きを保つ役割を持つため、減少によって認知機能に影響を与えます。

さらに、子育てや親の介護、職場での責任増加など、心身への負担が重なると、物忘れが表面化しやすくなるのです。

 

物忘れが日常生活に影響を及ぼす場合は適切な対処が必要

たとえば、鍵の置き場所を毎日のように忘れる、同じ質問を何度も繰り返す、仕事の締切を頻繁に失念する──このような状態が続くと、周囲との信頼関係に影響を及ぼしかねません。

 

「うっかりミス」として片付けず、生活習慣や睡眠、栄養のバランスの見直しが重要です。必要に応じて、専門の医療機関での相談も視野に入れましょう。認知機能の低下を早期に察知できれば、未病の段階での対処が可能です。

 

40代の激しい物忘れのおもな原因はおもに4つ

「最近、人の名前がすぐに出てこない」「おとといの晩ごはんは、何食べたっけ?」

40代でこうした“激しい物忘れ”に悩み始めた方は少なくありません。若年層のうっかりとは違い、背景にはいくつかの明確な要因が潜んでいます。

 

ストレスや睡眠不足が脳に与える影響

仕事や家庭の役割が重なるこの年代は、心の緊張が続きやすく、眠りも浅くなりがちです。

 

睡眠は、脳が記憶を整理する大切な時間です。睡眠の質が落ちると、記憶力や集中力が低下し、物忘れが増えるリスクが高まります。厚生労働省も「良質な睡眠が心身の健康に不可欠」としており、日々の眠りの質は軽視できません。

更年期によるホルモンバランスの変化

女性の40代は、エストロゲンという女性ホルモンが急激に減少しはじめる時期です。

エストロゲンは脳内の神経伝達にも関わっており、ホルモンの変化が記憶力の低下に影響を及ぼすと言われています。更年期に入ると、急に思考がぼんやりしたと感じる方は多いのです。

好ましくない生活習慣

食事が偏っていたり、運動不足が続いたりすると、脳へ十分な酸素や栄養が届きにくくなります。

インスタント食品や糖質の取り過ぎも、血糖値を乱し、脳の働きに悪影響を与えます。毎日の小さな選択が、実は“記憶力の質”に直結しているのです。

普段飲んでいる薬の副作用

市販の風邪薬や、病院で処方される睡眠導入剤の説明書きにも目を通してみて下さい。

なかには、「記憶があいまいになる」「注意力が落ちる」といった副作用を伴うものがあります。とくに複数の薬を併用している方は、医師や薬剤師に確認する習慣をつけましょう。

 

自分でできる!40代からのもの忘れセルフチェック法

 

 

ある日ふと、「あれ、なんでこの部屋に来たんだっけ?」と立ち止まる瞬間が増えたような気がする。

 

そうした“激しい物忘れ”を見過ごすと、日常生活に支障が出る可能性があります。というのも、仕事に追われ、家族の世話にも手が抜けないのが40代女性の特徴だからです。実際、毎日のタスクに追われて、自分の体調の変化に気づきにくくなっている方も少なくありません。

 

だからこそ、早めにセルフチェックを取り入れて、自分の状態を確認してみましょう。

日常生活の中で「あれ?」が増えたら要注意

名前や予定が思い出せない、買い物に行ったのに何を買うか忘れてしまう。こうした「ささいな抜け」は、最初は誰にでも起こりえます。

 

しかし、頻度が増えてきたと自覚する場合は注意が必要です。記憶力が一時的に落ちているのか、それとも脳の働き自体に変化が起きているのかを見極めるには、日々の気づきをていねいに振り返ることが第一歩になります。

 

専門医がすすめる簡単なセルフチェック法「3語記憶テスト」

物忘れの程度を知るための簡単な記憶チェックに「3語記憶テスト」があります。やり方は、以下のようにとてもシンプルです。

 

【ステップ】

  1. 身近な単語を3つ決める(例:「傘」「猫」「赤い車」)
  2. タイマーをセットして、5分経ったらその3語を何も見ずに思い出せるか試すだけ。

 

「簡単そう」と思っても、実際には思い出せない人も少なくありません。

記憶の保持力が衰えているきざしかもしれません。気になる方は、日を変えて何度か試してみましょう。

 

受診の目安になる物忘れの“サイン”

セルフチェックで不安を感じたら、家族や周りの人の意見も聞きながら、客観的に自分の物忘れの程度を把握してみることをおすすめします。

とくに

  • 同じ質問を何度も繰り返してしまう
  • 自分での支払いがスムーズにできない
  • 人の名前がまったく思い出せない

などの傾向が続く場合は、脳の機能が一時的ではなく継続的に低下している可能性があります。

この後にある「こんなときは40代の人も専門機関へ相談しましょう」の章も参考にしてみてください。

 

40代から始めたい!物忘れを防ぐ4つの習慣

「どうしてこんなに忘れっぽくなったの?」と感じ始めたら、今の生活をほんの少し見直すだけでも、記憶の持続力は変わります。

まだまだ大丈夫です。脳は40代からでも鍛え直せるんですよ。ここでは、日常に無理なく取り入れられる4つの予防習慣をご紹介します。

 

メモや記録で物忘れを防ぐメモや記録の習慣化

うっかり予定を忘れてしまった、という経験は誰にでもあります。「またやってしまった…」を減らすために効果的なのが、手帳やスマートフォンを活用した“記録の習慣”です。

「書く」という行為が脳を刺激し、記憶定着の見方に。とくに毎日のToDoリストや日記などは、忘れていたことを思い出す「きっかけ」としても機能します。

 

食事・栄養面からできる脳ケア(オメガ3、ビタミンD、発酵食品など)

何を食べるかは、脳の健康に直結します。脳の健康を保つための食事ポイントは

 

オメガ3脂肪酸:神経の伝達をスムーズにして、記憶力の維持に役立つとされる

  • 青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多く含まれる
  • クルミ
  • えごま油、アマニ油など

 

ビタミンD脳の炎症を抑える働きがあると報告されている

(ビタミンDを多く含む食材の例)

  • 魚類:サケ、サンマ、イワシ、サバ、マグロ(脂の多い部分)
  • きのこ類:干ししいたけ、まいたけ、乾燥きくらげ
  • 卵黄など

※さらに、ビタミンDは日光浴によって体内で合成される。

 

発酵食品腸内環境を整えることで、脳への間接的な好影響を期待できる

  • ヨーグルト
  • 納豆
  • キムチなど

これらの栄養素や食材を意識した食事を実践してみてください。

 

脳に効く!運動やおすすめの生活習慣

脳の働きを高めるには、軽い運動が適しています。欠かせん。とくにウォーキングやジムでのバイクなどの有酸素運動は血流を促し、脳へ酸素と栄養を効率よく届けてくれます。

 

また、音読や声を出して歌うなどの発声練習も、言葉をつかさどる脳の領域を刺激します。

加えて、深く眠れる環境づくりも忘れずに。良質な睡眠は、脳の情報整理に必要な貴重な時間だからです。

 

脳トレよりも大事な「人とのつながり」と「対話」

脳トレより大切なのは「人とのつながり」と「対話」です。

アプリやパズルでの脳トレも悪くありませんが、40代からの記憶力の変化をゆるやかにするには、「人と関わること」が何よりの刺激になります。

家族や友人とのおしゃべり、趣味のサークルやランチ会など、誰かと話す時間は、自然と考える力や言葉の引き出しを活性化してくれます。

とくに一人の時間が多い方は、意識して「話す機会」をつくるだけでも、脳の働きをしっかり保てるでしょう。

 

こんなときは40代の人も専門機関へ相談しましょう

「年齢のせいかも」と放置しがちな40代の物忘れ。しかし、症状によっては専門機関に相談するべきケースもあります。

早期に対応すれば、生活の質を落とさずに済む可能性が高まります。ここでは、受診を検討したほうがよい3つのケースをご紹介します。

 

記憶だけでなく判断力や集中力低下の自覚がある

約束を忘れるだけでなく、仕事中に判断ミスが増えた、何をしていたか途中でわからなくなる、考えがまとまりにくいと感じた場合、それは単なる物忘れではありません。

集中力や判断力も一緒に落ちてきているときには、脳の働きそのものが鈍くなっているサインです。加齢による一時的な変化ではなく、早期の対処が必要なケースもあります。

思考が「止まりやすい」「切り替えに時間がかかる」と感じるなら、脳神経外科や物忘れ外来などの専門窓口で相談しましょう。

物忘れのほかに高血圧や高血糖などを指摘された

40代は生活習慣病のリスクが高まる時期でもあります。とくに高血圧や糖尿病は、脳の血管にダメージを与えるため、認知機能の低下に直結します。実際、糖尿病のある方は認知症を発症する確率が約2倍に上がると報告されています。

もし健康診断で血圧や血糖などに注意を受け、かつ物忘れが気になり始めているなら、放置せず内科または神経内科に相談するのが安心です。

 

物忘れが多くなり生活に影響を及ぼしている

「探し物に費やす時間が急に増えた」「会話の中で言葉がすぐ出てこない」「支払いミスが続く」など、生活に明確な支障が出てきた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。

本人は自覚がなくても、家族や周囲が“いつもと違う”と感じているときは、専門家の判断を仰ぐべきタイミングです。とくに、日常動作や金銭管理に支障が出るのは要注意。早めに行動することで、改善や進行の予防につながります。

 

まとめ:もの忘れが激しい40代の人は自身の生活を振り返ってみましょう

 

40代は、仕事や家庭の忙しさ、更年期などの影響で物忘れを感じやすい時期です。とはいえ、すぐに深刻にとらえる必要はありません。まずは日々の生活習慣を整えることが大切です。

 

質のよい睡眠、バランスの取れた食事、軽い運動やリラックスする時間を意識するだけでも、記憶力や集中力の改善につながります。

 

日常のちょっとした心がけが、物忘れの予防に大きく役立ちます。無理なく続けられる範囲でかまいません、できることから始めてみましょう。

 

 

『参考文献』

◆【内閣府】R5世論調査 図13「日常生活での悩みや不安」

◆【ウーマンズラボ】女性の日常生活の悩み・不安、ピークは40代 項目別・年代別の割合

◆【厚生労働省】健康づくりのための睡眠ガイド2023 P12~14

◆National Library of Medicine

◆【厚生労働省】認知症の臨床評価について

◆harvard health publishing

◆糖尿病ガイドライン2024 P420

 

この記事のライター

田代文恵

田代 文恵

1990年 正看護師資格取得
ライフスタイルに合わせつつ、総合病院やクリニック、訪問看護・介護施設でさまざまな年代の患者さんや利用者さんのケアをおこなってきました。
2023年 フリー看護師ライターとして活動開始。健康寿命や認知症予防に関する発信から、人生100年時代の新しい生き方を提案していきます。
2025年 電子書籍初出版
看護師免許番号 700804
介護支援専門員登録番号 0406186
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