更年期の肩こりはなぜつらい?身体とこころの負担を減らす実践法を解説

更新日:

「肩こりが治らなくてつらい」

「簡単に痛みを和らげる方法はないだろうか」

「続けられるセルフケアが知りたい」

そんな思いを抱えながら、日々の忙しさに追われていませんか。

肩こりは、更年期世代の女性に特に多い悩みの一つです。無理を重ねて我慢すると、頭痛や全身のだるさにつながり、気力まで奪われる場合もあります。さらに、年代特有のホルモンバランスの変化によって、肩こりが長引くケースも珍しくありません。

ついつい「年齢のせい」と片付けたくなりますよね。しかし、なぜ起こりやすいかを理解できれば、つらさの軽減につながりやすいでしょう。

この記事では、更年期と肩こりの関係をわかりやすく解説し、今日から取り入れられるセルフケアやサポート方法をご紹介します。

 

更年期に肩こりが増えるメカニズムとおもな原因   

更年期の肩こりは、単なる姿勢や疲労だけでなく、この時期特有の身体の変化が深く関与しています。更年期に肩こりが起こりやすいメカニズムを理解して、適切なケアや対策につなげましょう。

更年期の肩こりに特徴的なメカニズム

更年期に肩こりがひどくなる背景には、ホルモンと自律神経の乱れがあります。女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減少すると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。自律神経(交感神経と副交感神経)は、血管の収縮や拡張をつかさどっています。

特に肩や首まわりは血行不良が起こりやすく、慢性的な肩こりを招きます。さらに、加齢による筋肉量の低下や日常的なストレスは、症状の悪化につながるでしょう。

更年期の肩こりは、単なる筋肉疲労だけではなく、体内のホルモン環境が引き起こすことが特徴です。

【原因①】エストロゲン低下と筋肉のこわばり

更年期には、卵巣機能が低下し女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンには、血管の収縮や拡張の調節、筋肉の柔軟性を保つ働きがありますそのため、不足すると筋肉が硬くなり、肩こりを引き起こす場合があります。

マッサージだけでは改善しにくい肩こりは、ホルモンの変動が原因かもしれません。

【原因②】自律神経の乱れと血行不良

肩こりの原因には、自律神経の乱れも深く関わっています。

エストロゲンの減少によって、自律神経が不安定になるとアクセル役の「交感神経」とブレーキ役の「副交感神経」のバランスが崩れ、血管の収縮や筋肉の緊張状態が続いてしまうのです。筋肉内部の老廃物が排出できず、筋肉内に蓄積することで肩こりが発生します。

さらに、睡眠障害や倦怠感などの更年期症状と肩こりが重なる場合もあり、身体とこころ両面からのケアも大切です。

【原因③】ストレスや運動不足

こころと身体の不調は、互いに影響し合うことが知られています更年期は、仕事や家庭でのストレスや将来への不安など、精神的にも負担が大きい時期です。

さらに、忙しい毎日では定期的な運動習慣を取り入れることが難しい場合もあるでしょう。運動不足は、全身の血流低下を招き、筋肉の回復を遅らせます。

ストレスや運動不足が続くと、不眠や疲労が増しやすく、筋肉の回復が遅れて肩こりが慢性化しやすくなります。

リラックスできる時間や好きなことに集中する機会を持ち、心身の緊張を和らげるよう心がけましょう。

【原因④】ひどい肩こりは病気の可能性もあり

肩こりが長期間治まらず、ほかの体調不良も自覚している場合は、別の病気が隠れているかもしれません。

更年期は、体調の変化が激しい時期でもあるため、「仕方ない」と自己判断せず、早めの医療機関の受診をおすすめします。

 

更年期の肩こりを和らげるセルフケア

肩こりの症状を和らげるセルフケアをご紹介します。

日常生活のリズムを整える

まずは、生活習慣を見直してみましょう。

 

特に、更年期世代の方は日々の身体・体調の変化が大きいため、規則正しい生活リズムを保つことが重要です。

 

  • 質の良い睡眠を確保する
  • 栄養バランスの取れた食事を心がける
  • 定期的に有酸素運動や筋トレをおこなう

 

これらの生活習慣を改善できれば、肩こりだけでなく全身の健康維持にもつながります。

温活・マッサージで血行を促進する

冷えやすい体質や血行不良による老廃物の蓄積は、筋肉の緊張につながります。

 

血流を改善し肩こりをほぐすには、以下の方法をおすすめします。

 

  • シャワーだけでなく湯舟にゆっくりつかる
  • 手足や首を冷やさないよう保温する
  • 軽いマッサージや指圧をおこなう
  • カイロを活用する

特に、寒い季節や冷房を使う時期には、身体全体を冷やさない工夫が大切です。

毎日の軽いストレッチを習慣にする

 

運動不足は、筋肉量や柔軟性を低下させ、血流も滞ります。特に、肩回りの筋肉は硬くなりやすいため、ストレッチの習慣化が予防につながります。

 

手軽にできるストレッチは次のとおりです。

 

肩ストン体操

首たらーり体操

肩甲骨よせ体操

腕ぶらぶら体操

ストレッチを習慣化するには、毎日全部やらなくて大丈夫。最初は1つだけやってみましょう。もし痛みが出たら、無理せずに中止することも重要です。更年期の肩こりには、頑張らないケアが効果的といえます。

良い姿勢を意識する

良い姿勢と悪い姿勢の例

 

良くない姿勢も、更年期の肩こりを悪化させる要因です。長時間のスマホやPC作業による猫背や前傾姿勢は、肩甲骨周辺の筋肉を常に引っ張った状態にしています。

 

こうした悪い姿勢が続くと、筋肉の緊張によって血行不良が起こり、肩こりの慢性化につながります。筋肉量が減少する40代以降の女性は、姿勢を支える力も弱まるため、さらに肩こりを感じやすくなるのです。

 

更年期以外に考えられる肩こりの原因と受診の目安

肩こりが長引く場合は、更年期だけが原因とは限りません。首や肩そのものの病気に加え、血圧や内臓の不調、心身の緊張などが影響し、肩の痛みや重苦しさとしてあらわれることがあるからです。

肩こりの原因となる病気

 

いつも違う痛みを感じ、肩こりが長期間改善しない場合は、他の病気との関連も考えられます。たとえば、以下のような病気です。

 

  • 五十肩(肩関節周囲炎)や変形性頸椎症では、肩から腕へのしびれが出やすくなる
  • 高血圧が続くと首や肩の血流が悪くなり、重苦しさを感じることがある
  • 狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞など循環器や脳の病気が肩の痛みとして、あらわれるケースもある(左右差のある強い痛みに注意が必要)

 

症状別に見る受診先の選び方

肩こりの原因に応じて、受診すべき診療科は異なります。肩こり以外の症状も含めての判断が重要です。次の表を参考に、全身の症状を見ながら受診先を考えましょう。

 

受診すべき診療科 肩こり以外のおもな症状
整形外科 首を動かすと強まる痛み・腕に広がるしびれ
婦人科 月経の乱れ、ほてり、不眠などの更年期症状
心療内科 長期間続く強い不安や緊張
脳神経内科 強い頭痛や吐き気
消化器内科 胃の不快感や食欲低下

 

早めに受診した方がよい症状

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 痛みが急に強くなった
  • 頭痛や吐き気を伴う
  • 手や腕のしびれや痛みが続いている

これらは身体からの重要なサインかもしれません。

 早期に原因を把握できれば、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響も最小限に抑えられます。「いつもの肩こり」と我慢せず、違和感を覚えた段階で医療機関に相談しましょう。

 

更年期の肩こりを薬やサプリでサポートする3つの方法

肩こりを薬やサプリでサポートする方法

 

更年期の肩こりは、生活習慣の見直しや運動に加えて、薬やサプリを上手に使うことで負担を軽減できます。

 

痛みの強さや体質によって合う対処法が異なるため、薬を使う目的を整理し、自分の身体・調に合った方法を選びましょう。

市販薬で一時的に痛みを解消

 

肩の痛みが強い日は、市販の鎮痛薬や塗り薬が有効です。飲み薬は痛みを感じる神経の働きを抑え、動作時のつらさを和らげます。塗り薬や貼り薬は血の流れを促し、こわばった筋肉を温める役割があります。

 

ただし、長期の連用は胃への負担などを招く場合があるため、症状が落ち着いた後は使い方を見直しましょう。

 

体質に合わせて漢方薬を選択

 

更年期の肩こりには、身体の冷えや疲れやすさ、気分の落ち込みが関係する場合が多くあります。

 

漢方薬は、身体全体のバランスを整えるという考え方に基づいています。冷えを感じやすい方には身体を温める処方、緊張が強い方には気の巡りを整える処方が用いられます。

 

効果の現れ方は緩やかなため、薬剤師や医師に相談しながら続けることが大切です。

 

食生活の補助としてサプリを活用

 

食事だけでは不足しやすい栄養を補う目的で、サプリを取り入れる方法もあります。

 

筋肉の働きを助ける栄養素や、女性の身体・体調の変化を支える成分などが代表例です。あくまで食生活の補助として考え、過剰摂取を避ける意識が大切です。

 

体調の変化を観察しながら選ぶことで、肩こり対策を無理なく継続できます。

 

心の負担を減らして肩こりをやわらげる

心の負担を減らして肩こりをやわらげる

 

気持ちの緊張をほぐすことが、肩の力を抜く第一歩になります。

不安やストレスが続くと、無意識のうちに肩に力が入り、血流や呼吸が浅くなりやすいためです。身体のケアと同時にこころのケアも大切にしましょう。

年齢のせいと思い込まない 

年齢だから仕方がないという考えは、つらさを我慢することになります。

更年期は身体の変化が重なりやすい時期ですが、痛みや重苦しさには必ず背景があります。

原因を知り、対処できる部分に目を向ける姿勢が回復への第一歩です。年齢だけで片づけず、今の体調を見つめ直してみましょう。

自分を大切にする

忙しさを優先し、自分を整えることを後回しにすると心身の緊張は抜けにくくなります。

以下のような、気持ちがほぐれる習慣を少しずつ取り入れてみましょう

  • 短い休憩で深呼吸をする(吐く息を長くする)
  • お気に入りの音楽を聴いたり口ずさんだりする
  • 好きな香り(アロマ・お香)でリラックスする

こうした小さな行動でも、気持ちは緩んでいきます。自分を労わる時間の積み重ねが、肩のこわばりを和らげる土台となります。

誰かの手を借りる

一人で抱え込まず、外部の力を借りることもたいへん有効です

全国20店舗展開している女性専門整体サロンパウワウでは、全身の筋肉のこりをほぐし骨盤や背骨の歪みを整える事で自律神経のバランスを整える施術が人気です。専門知識を持つ施術者によるケアは、身体だけでなく気持ちの緊張をほぐしてくれます。

落ち着いた空間で身体を預ける時間は、心の切り替えにもつながります。信頼できるサロンや相談先を持つことが、継続的な肩こり対策の支えになるでしょう。

 

まとめ:更年期の肩こりをきっかけに、自分をいたわる習慣を育てよう

 

更年期の肩こりは、身体の不調だけではなく、生活習慣や心の状態を見つめ直すきっかけでもあります。

ホルモンの変化、姿勢、ストレスなど、さまざまな要因が重なる肩こりには、身体と心の両面からのケアが大切です。身体の声に耳を傾けることは、これから始まるセカンドライフをより豊かに過ごすための準備にもつながります。

痛みを我慢せず、自分を大切にする習慣を少しずつ育てていきましょう。肩の力を抜いて、これからの人生を前向きに、軽やかに歩んでいけるはずです。

 

【参考文献】

更年期障害と 症候群との関連についての文献検討

更年期によく見られる筋骨格系の痛みの症状

更年期障害と労働

【厚生労働省】こころの健康気づきのヒント集

Image:コッドマン体操-MSDマニュアル家庭版

エクオールの効果|更年期障害・更年期の悩みのことなら更年期ラボ

肩こりにおすすめ!肩甲骨ストレッチ | サワイ健康推進課

肩こりを訴える疾患と原因|医療と健康情報

 

この記事のライター

田代文恵

田代 文恵

1990年 正看護師資格取得
ライフスタイルに合わせつつ、総合病院やクリニック、訪問看護・介護施設でさまざまな年代の患者さんや利用者さんのケアをおこなってきました。
2023年 フリー看護師ライターとして活動開始。健康寿命や認知症予防に関する発信から、人生100年時代の新しい生き方を提案していきます。
2025年 電子書籍初出版
看護師免許番号 700804
介護支援専門員登録番号 0406186
YMAA個人認証