産後に涙が止まらない?その理由と対処法を徹底解説

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出産後、なぜか涙が止まらなかったり、些細なことでイライラしてしまったり…そんな自分に戸惑うお母さんも多いのではないでしょうか。初めての育児に期待と不安を抱えながらも、これまで経験したことのない感情の変化に不安を感じてしまうのは自然なことです。

実は、出産後にはホルモンバランスが急激に変わり、体も心も変化に対応しようとしています。その上、育児や生活環境の変化も加わり、感情が不安定になりやすい時期なのです。

この記事では、産後に涙が止まらなくなる理由や、感情の起伏が激しくなる原因について詳しく解説します。また、感情が乱れたときに心を落ち着けるための実践的な対処法を紹介し、「どうして自分だけこんなふうになってしまうの?」という不安を少しでも軽くしてもらえる内容をお届けします。
この記事を通して、感情の揺れが一時的なものであり自然な反応であることを理解し、無理せずに自分のペースで育児に向き合うためのヒントを見つけてください。

産後に涙が止まらない理由

産後に涙が止まらないのには、いくつかの原因があります。出産後のホルモンバランスの変化や睡眠不足、初めての育児によるストレスなどが、気持ちの不安定さを引き起こしやすくしているのです。それぞれの原因について、わかりやすく見ていきましょう。

ホルモンバランスの急激な変化

妊娠中に増えていた女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)は、出産後に急激に減ります。この急な変化が原因で、気持ちのコントロールが難しくなり、些細なことで涙が出たり、イライラしたりしやすくなるのです。このホルモンの変動は時間が経つと落ち着くことが多いですが、産後すぐはホルモンバランスの影響で涙もろくなるのは自然なことです。

睡眠不足と身体的疲労

産後は赤ちゃんのお世話で夜中も何度も起きるため、まとまった睡眠が取りにくくなります。そのため慢性的に寝不足になり、体の疲れが回復しづらくなってしまいます。
また、出産自体が大きな体力を使う出来事のため、体も心も消耗しています。こうした疲労の蓄積が、涙もろさや気分の落ち込みを引き起こしやすくしているのです。

産後に涙が止まらない理由

 

マタニティブルーズとその特徴

産後に急に涙が止まらなくなったり、気持ちが落ち込んだりするのは、よく「マタニティブルーズ」と呼ばれるものです。これは出産後の多くのお母さんが経験する一時的な感情の変化で、ホルモンの変化や育児の疲れが影響しています。ここでは、マタニティブルーズがどうして起こるのか、どんな症状が現れるのかについて詳しく説明します。

マタニティブルーズとは?

マタニティブルーズとは、出産後の急なホルモンバランスの変化により、感情が不安定になりやすい状態のことです。出産によって、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが急に減り、体がその変化に対応しようとします。このため、気持ちが不安定になりやすく、「急に悲しくなって泣けてくる」「イライラしてしまう」といったことが起こりやすくなります。

マタニティブルーズは、出産後2~3日目から始まり、1週間ほどで少しずつ治まることがほとんどです。初めて経験する感情の揺れに戸惑うかもしれませんが、体が少しずつ元の状態に戻るにつれて気持ちも安定してきます。

マタニティブルーズの症状と自然な回復

マタニティブルーズの主な症状には、次のようなものがあります。

  • 涙が止まらない:特に理由がなくても涙が出てしまうことがあり、些細なことで泣けてきてしまいます。
  • 気分の落ち込み:些細なことが気になって気分が沈みやすくなり、「自分がちゃんとできていない」と思ってしまうこともあります。
  • 急な不安感:育児のことや将来のことを急に心配し、不安に感じることが増えます。

このような状態は、出産後しばらくの間、よく見られるものです。多くの場合、数日から2週間以内に体がホルモンの変化に慣れていくと、自然に落ち着いていきます。無理に気持ちを抑え込もうとせず、「一時的なものだから大丈夫」と考えることも大切です。涙が出るときは無理に止めず、自然に涙を流すことで気持ちが少し楽になることもあります。

     

産後うつ病との違い

マタニティブルーズは一時的な感情の揺れですが、もしも気分の落ち込みや疲れが長引く場合は「産後うつ病」の可能性があります。ここでは、マタニティブルーズと産後うつ病の違いを詳しく解説し、産後うつ病が疑われるときの対応についても説明します。

産後うつ病の特徴

産後うつ病は、出産後の数週間から数ヶ月の間に現れることが多く、マタニティブルーズとは違い、症状が長期間つづきます。産後うつ病には、次のような特徴があります。

  • 気分の落ち込みが続く:一時的ではなく、長い間気持ちが沈んだままで、元気が出ない状態が続きます。
  • 育児や日常への無関心:赤ちゃんのお世話や日常生活に対して興味がわかず、やる気が出ないことが多くなります。
  • 慢性的な疲れ:休んでも疲れが取れず、何もしたくないと感じることが続きます。
  • 強い孤独感や自己否定:家族や周りの人との関わりを避けたくなり、「自分はダメなお母さんだ」と感じることが増えます。

産後うつ病の兆候と対応の必要性

産後うつ病が疑われる兆候には次のようなものがあります。

  • 気分が沈みっぱなし:一時的な気分の揺れではなく、2週間以上にわたって気持ちが落ち込んでいる。
  • 強い不安感や絶望感:これから先のことを考えると不安でたまらなくなったり、未来に希望が持てなくなったりする。
  • 「自分はダメだ」と感じ続ける:育児や家事に自信が持てず、強い自己否定感を感じてしまう。

もし、こうした症状が続いている場合は、無理をせず医師やカウンセラーに相談しましょう。産後うつ病は治療やアドバイスを受けることで回復が期待できます。早めに専門家の助けを借りることで、少しずつ気持ちが落ち着き、育児や日常生活も前向きに取り組めるようになっていきます。

涙を乗り越えるための5つの対処法

産後、涙もろくなったり、気持ちが不安定になったりするのはよくあることです。できるだけリラックスし、自分を大切にしながら、無理なく心を落ち着ける方法を取り入れてみましょう。ここでは、気持ちを和らげるための具体的な対処法を5つご紹介します。

感情を抑え込まずに涙を流す

涙が出るのは、心が緊張や疲れを感じているサインです。無理に涙を止めたり、気持ちを押さえつける必要はありません。泣きたいときはそのまま泣いてみましょう。涙を流すことで、かえって心が軽くなることも多いです。

周りの人に話を聞いてもらう

一人で抱え込まず、家族や友人に気持ちを話してみるのもおすすめです。悩みや不安を話すことで、心が落ち着いたり、安心感を得られることがよくあります。周りに話しづらい場合は、同じように出産を経験したお母さんたちと話してみるのも効果的です。「自分だけじゃない」と感じることで、気持ちが楽になることもあります。

産後に涙が止まらない?その理由と対処法を徹底解説

生活リズムを整える

赤ちゃんのお世話で生活リズムが崩れがちですが、できるだけ体を休めるように心がけましょう。特に、眠れるときはしっかりと休むことが大切です。疲れがたまると感情も不安定になりやすいため、短い時間でも体を休ませることで気持ちが安定しやすくなります。

自分に優しく、無理をしない

「ちゃんとしなくちゃ」と思いすぎていませんか?完璧を目指すとプレッシャーが大きくなり、心に負担がかかります。手を抜くところは抜き、「今日はここまで頑張ればOK」と自分をねぎらってください。自分に優しくすることで、気持ちの負担が軽くなり、リラックスしやすくなります。

気持ちが続く場合は専門家に相談

産後、涙が止まらない、気持ちが沈んだままで心が晴れない状態が続くときは、専門家に相談してみましょう。心療内科や精神科の医師、またはカウンセラーに話を聞いてもらうことで、気持ちが楽になり、少しずつ心が安定していくことが期待できます。

また、自治体が運営する母子保健センターや保健所でも、産後の悩みについて相談できる窓口を設けている場合があります。こうした場所なら、気軽に相談できるうえ、産後の不安や悩みに関するサポートや情報提供を受けやすくなっています。まずはお住まいの地域で、相談窓口があるか調べてみるのも良い方法です。

最初に産婦人科で相談して、必要に応じて心療内科や精神科を紹介してもらうのもおすすめです。専門家に話を聞いてもらうと、「自分だけではない」と安心でき、育児に対する不安も少しずつ和らぎます。

 

家族や周りのサポートが必要な理由

産後は気持ちが不安定になりやすく、ひとりで育児や家事を頑張るのはとても大変です。家族やパートナーの助けがあると、心に余裕ができて、育児も落ち着いて進めやすくなります。ここでは、家族やパートナーのサポートが大切な理由を具体的に説明します。

家族の協力が心の安定につながる

産後のママは体力が戻っていないことも多く、家事や育児をひとりで全部こなすのは本当に大変です。たとえば、家族が料理や洗濯、掃除を手伝ってくれたり、赤ちゃんを少しの時間見てくれるだけでも、ママはその間に少し休むことができます。そうすることで、体と心が休まり、気持ちが安定しやすくなります。

家族の支えがあると「ひとりじゃない」という安心感が生まれます。心に余裕ができて、育児に前向きな気持ちで向き合いやすくなります。

パートナーと話し合うことが大切

産後は、パートナーとしっかり話すことがとても大切です。赤ちゃんのお世話は大変で、母親が「疲れた」「つらい」と感じることも多いでしょう。
どんなに協力的なパートナーでも、ずっと赤ちゃんの傍にいるママの苦労を思うように理解してくれるとは限りません。ずっと赤ちゃんのそばにいるママにしかわからない苦労があると思います。
夜泣きや母乳のトラブル、便秘などの赤ちゃんのちょっとした体調不良など、うまくいかない時は余計に気持ちが疲れてしまったり、つらいと思うことも多くなると思います。そんなときは、小さなことでも正直に気持ちを話すことが大切です。

たとえば、「今日は疲れているから少し休みたい」「夜中の授乳がつらい」などと話すと、パートナーもママがどれだけ大変かを理解しやすくなります。パートナーが協力してくれると安心感が生まれ、家の中の雰囲気も明るくなりやすいです。

まとめ

産後に涙が止まらなくなるのは、ホルモンバランスの変化や、育児による疲れやストレスが影響しているためです。特に「マタニティブルーズ」と呼ばれるこの感情の揺れは、出産後の多くのお母さんに見られる一時的な変化で、時間が経つと自然に落ち着いてきます。無理に涙を我慢せず、「今はそういう時期」と受け入れながら過ごすのが大切です。

また、産後の時期は体と心がデリケートなため、ちょっとしたことでも気分が落ち込み、涙が出てきてしまうことは、多くのママが経験することです。出産前は「自分は大丈夫」と思っていた人でも、どんなお母さんにだって涙が止まらないくらい気分が落ち込んでしまう状態になってもおかしくありません。

そんな時は家族やパートナーにできる限り協力してもらうことが大切です。育児や家事の分担や、育児で感じる不安や悩みを共有することで、「ひとりで頑張らなくていい」という安心感が生まれ、心に余裕が生まれます。気持ちが楽になり、育児にも前向きに取り組みやすくなります。

もしも気分の落ち込みや涙もろさが2週間以上続いたり、日常生活に支障を感じる場合は、産婦人科や心療内科など専門の医師に相談しましょう。
また、自治体が運営する母子保健センターや保健所にも産後の相談窓口があります。気軽に相談できる場所があると、「ひとりじゃない」と感じられて安心です。周りに相談することは決して特別なことではなく、多くの人が利用していますので、気軽に活用してみてください。

産後の感情の変化は自然なものであり、たくさんのお母さんが同じ悩みを抱えています。少しずつ自分のペースで、周りの人に支えられながら安心して育児に向き合っていきましょう。

この記事のライター

清水 彩

清水 彩

看護師
1999年 看護師免許取得し、国立療養所富士病院に看護師として入職
2005年 富士宮市立病院に入職 循環器内科、呼吸器内科など多くの科を経験 (他、消化器内科、脳外科、心臓カテーテル室、内視鏡室)
2008年 呼吸療法認定士取得
2022年 子育てとフルタイム勤務の両立に悩み、退職
2022年 退職後 内視鏡クリニックとデイサービスの非常勤で働きながら フリーランスの看護師として活躍開始 webライター、セミナー講師などで活躍中 看護師の自由な働き方についてSNSで情報発信している